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オークション体験本番! 入札でお目当てのジュエリーを競り落とす
~オークション体験 当日編~

案内人:ジュエリーコンシェルジュ 原田信之
宝石の鑑定に資格はありません。経験が問われます。私の場合はバイヤーとしてのキャリアがベースです。これまでに買い付けでに訪問した国は18カ国。例えば、ダイヤモンドならベルギーのアントワープ、イスラエルのテルアビブ、インドのムンバイ、ニューヨーク、バンコクなど。特にアントワープには100回を超える買い付けを行っています。買い付けで常に時価を押さえ、ジュエリーの製作業務から製造コストに精通し、卸業務を通じて流通価格を認識しています。また10年間オークション会社の査定を請け負っていましたので再流通市場での相場も把握しています。全ての知識を結集して「価値に見合った価格」を設定しています。
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体験者:編集・ライター 宮坂敦子
幼い頃からの手作り好きが高じて彫金学校に通ったことをきっかけにジュエリーの世界へ。著書『ジュエリーの基本ブック』(誠文堂新光社)など。ジュエリー業界の職種の垣根を飛び越えて、学び、交流するコミュニティ・ジュエリー研究会ムスブ主宰

1時間に競りは約150点!予想以上のハイスピード

いよいよオークション当日。会場の入り口で受付を済ませて「パドル」と呼ばれる落札用の札を受け取ります。

12時スタートで、終了は18時の予定ですが、入退場は何時でもOK。お目当ての作品が競りに掛けられる時間を見越して来場し、終わるとすぐ帰るベテランさんもいるそうです。

場内のお客さんは男女半々で50名超くらい、ご夫婦やお友達同士とおぼしき女性2人組もたくさんいます。服装もみなさんごく普通で(ドレスやタキシードではなく)安心しました。

客席の正面にはオークションを進行するオークショナーが立ち、左手のスクリーンに進行中の作品の写真が投影されます。

「では10万円から始めます。10万5千円、11万円、12万円……」オークショナーのアナウンスはハイスピードで価格が上がり、リアルタイムでスクリーンの表示価格が円、ドル、ユーロ、ウォン、元で表示されていきます。

ジュエリーコンシェルジュ ワンポイントアドバイス

「すごいスピードで、1時間で150点ほど進みます。雰囲気に圧倒されて一度もパドルを上げられなかった人もいますよ」

それも納得、すごい緊張感で喉がカラカラ、瞬きもできずドライアイになりそうです。

会場の左手、一段高くなったところにずらりと座るのは「委託入札」「電話での同時参加」のオークションスタッフたち。委託入札とは、事前にファックスで入札最高額を送信しておくと、当日は会場に来なくてもオークションスタッフがその最高額までパドルを上げて代行参加してくれる仕組みです。

「電話での同時入札」は文字通り、オークションスタッフが電話で会場の値上がりを実況生中継、電話主の指示に従って指示額まで粘ります。中国語やフランス語、英語が漏れ聞こえてくることから、電話主は海外在住の模様です。

「では、落札します。15万円」
「会場が続かなければ、お電話から落札します」
「それでは入札から。35万円」
「よろしいですか。なければ引きます」

誰も入札しない作品も相当数あり、逆にみんなが欲しいと思う作品は重なり、パドルが会場、電話入札、委託入札のすべてから何本も上がります。宝石やブランド人気が一目瞭然、オークションは公正で非情です。今回は、スターサファイア、オパール、アンティーク品、海外ブランド品がホットな印象。下見会で気になっていたパライバトルマリンのペンダントは380万円で落札されました。

5万円、5万5千円……価格は一気に高騰

今回一番の競り合いが見られたのはGRAFFのダイアエタニティリング。予想落札価格(250~300万円)を遥かに超える580万円まで値が上がり、「それでは落札します。会場の皆さん、拍手をお願いします」というオークショナーのアナウンスに、場内からは健闘を称える拍手が送られました。

さて、わたしの落札の行方は? 狙いを定めた299番ファイアーオパールのリングに備えて意欲は満々。297、298、よし次と勢い込んでパドルを挙げると、なんと「オークショナーの交替です。少しお待ちください」とアナウンス。あらら、空回りするやる気にイヤーな予感が芽生えます。

「では1万円から始めます。1万5千円、2万円……」

価格はどんどん上がり、斜め後ろあたりに座っていると男性(初老)との一騎打ちに。否が応にも心の底に封印した闘争心が燃え上がります。

「5万円、5万5千円」

あわわ、これは完全に予算オーバーです。「6万5千円」の声と、必死の思いでパドルを持つ手を降ろしたのが同時でした。ん?と不審顔のオークショナー。「6万5千円、41番の方(わたし)、よろしいですか?」「……よ、よ、よろしくないです」。

たはー、あとひと勇気が出ませんでした。ファイアーオパールは6万円で競り相手の手に。でも、やることはやったという満足感があります。

次は「成り行き」となっていた、アンティークのロードライトガーネットとパールのペンダントトップにチャレンジです。

「では、1万円から始めます」

場内からパドルがわっと上がります。わ、これはライバルがいっぱい。オークショナーの顔が心なしかニヤリと笑ったようです。

「4万円、4万5千円……」

価格はどんどん上がりますが、パドルは一向に減りません。あたた、これもギブアップ。誰よりもピンと挙げていた手をすごすごと降ろします。人生は世知辛いです。

10万円を超えるとパドルは一気に減り、結局こちらは13万円で落札されました。成り行きのものでも人気があれば、どんどん値上がりするのですね。

その後、原田さんの「この値段までなら落としていいと思いますよ」というアドバイスをもとに、数点を落札しました。パドルを返却し、支払いを済ませた後の高揚感といったら。これが「オークションハイ」でしょうか。

ジュエリーコンシェルジュ ワンポイントアドバイス

「どれもいいものが大変お手頃な価格で落札できたと思いますよ。オークションで『よろしくない』とおっしゃった人は初めてだと思いますが」

受付そばのソファーでは、お互いの落札物を見せ合って『それいいじゃないあなた』『これはお値打ちよ~』と盛り上がる奥様グループが。何かに似ていると思ったら、そうそう、バーゲンの後に喫茶店で戦利品を見せ合う姿を似ているのでした。そうか、こんなお買い物感覚の楽しみ方もあるのですね。

さらに、もし自分で出品していたら、いったい幾らで落札されたのか(されないのか)がつぶさに会場で見られることに。これは一層オークションが楽しめそうです。

思った以上に気軽で、高揚感満足感200%のオークション。国際展示場駅までの帰り道、頬に当たる海風も清々しく感じます。こんな体験をしない手はありません。ぜひまた来ようと心に誓ったのでした。